子育て奮戦記


子供をつくり育てることは、どんな芸術を創造することより創造的なことだと

ある芸術家がものの本に書いていたが、まったくその通りである。

焼物もなかなか自分のイメージ通りに焼きあがらないものだが、

今、中三の受験生を抱え、なかなか頭が痛い。

我息子もなかなかイメージ通りに育ってくれない。

親の希望通りに子を育てようというのが、そもそも無理な話である。

無理とは承知していても、口を出さねば気が済まないのが

親の心理というものだろう。私だけではあるまい。



確か。。。春だったと思う。ちょっとした家族団らんの場で

小学校の低学年でも解かるような社会地理の常識を

中三の息子が解かっていないことに気付いた。

家では「ガンダム」とプラモばかり、

あとは寝てばかりでスクスクと育った我息子に怒り爆発。

受験生がこんなことでどうする!!

と「目から火」を出しながら怒鳴り散らした。

その後、息子の部屋の壁に穴が空くのに、そんなに時間はかからなかった。

「私は、息子を三人育て上げたが、家の壁に穴が三つ空いた。」

と知り合いの大先輩から子育ての経験を聞いてはいたが、

我が家も例外ではなかった。



実をいうと、私は自分自身の子育てに関し、かなりの自信を持っていた。

窯元という仕事がら、年がら年中、家で仕事をしているので

子供が学校から「ただいまー」と言って帰ってくると、

「おかえり」と夫婦で迎えるのが日常で、

子供の行動はよく把握していたし、顔色を見れば何を

考えているかぐらいは解かったからである。

小さい頃から良くあちこち連れても行っていたし、

(正確にいうと、一方的に親の都合で連れ回していたのかもしれないが。。。)

親子の断絶とか、すれ違いとか、我が家には無縁だと思っていた。

が・・・。あの「目から火」事件以来、

息子は親と口をきかなくなった。

学校から帰るやいなや、黙々とした食事以外は、

自分の部屋に閉じこもるようになった。

部屋で何をやってんだか。。。

時々、ドタンドタンという震動をともなう衝撃音を発していた。

私たちの子育ての自信は、こっぱ微塵に砕け散り。。。

こうなると親としても、放って置くしかないと観念し。。。

そんな日が数ヶ月続いた。。。



そんな中、二学期になって青天のへきれきがやって来た。

息子が目の色を変えて勉強し始めたのである。。

今までなんか、定期テストの時でさえ

机で勉強したことなんかなかったのに。。。

夏休みに少しは勉強していた模様で、その成果が二学期に出て

それに自信をつけてやる気を出したみたいだった。

そして最近になってやっと、また親と少し口をきくようになった。



子育ては本当に難しい。

干渉しすぎてもいけないが、放任しすぎてもいけない。

しかし、言うべきことは、はっきりと言うべきだ。

人は、「親の意見と茄子の花は千にひとつも仇はない。」と言う。

自分の意見のすべてが、その子の将来の為になっていると

自分が聖人でもあるまいし、そこまでの自信はないが、

それでも、子供に言うべきことは、要所要所ではっきりと言うべきだ。

と痛感した。



たかが高校受験でこんなだから、

子供の行く末に対する親の心配は本当に尽きない。

親としては、粛々と希望の高校へ滑り込んでもらいたい。

そんな来年の春が、無性に待ちどうしい。

春は一面の桜色。。。