桜がちる夜に

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更新日 2018-05-20 | 作成日 2018-05-20

26、

 ばったり倒れた真咲が、くるっと振り返る。
「ない。やっぱり無いーっ!」
すでに出口は閉じられ、信じられない気持ちで、がっかりうなだれ立つ気が起きない。
「殿下、異界の地です。危険ですのでお立ち下さい。」
辺りを警戒するアイズの声に、顔を上げるとそこは緑一色だ。
明るい光が樹の間から降り注ぎ、光のカーテンのように苔生した地に降り注ぐ。
真咲が苔を撫でると、ふかふかして綿のようだ。
「あれ?苔なのに、じめっとしてない。」
起きあがったとき、何故かチャリンとグリフォンのネックレスのチェーンが切れた。
「あちゃ、切れちゃった。」
手を伸ばしたとき、バッと赤い鳥が横を通り過ぎる。サッとそれがかすめ取られた。
「あああああああーー!!」
「殿下!」
アイズがシュッと胸からナイフを取り、投げようとする。
「ダメ!ダメ!コロスナ!」
突然、金色の鳥が飛んできて邪魔をした。
その間に赤に青黄色と極彩色の鳥は、真咲のネックレスを足にしっかり掴んだまま、遠くナイフの届かない所へと飛んでゆく。
全身脱力した真咲が、へなへなと座り込んだ。
「ポチが……ど、ど、どおしよ……」
ポチがいないと、自分はアリほども役に立たない半人前分の一。
「俺は、もう駄目だあー」
すっかり空気が抜けて、ポロポロ涙を流しながら真咲は立ち上がる気力さえ失い、金色の鳥はパタパタと羽ばたきアイズの肩に留まった。
「殿下、どうか落ち着いて。私がここにおります。これから取り返しに参りましょう。」
「ひっく、ひいっく、取り返す?」
「はい。このまま帰っては、またあの女になんと言われるか……」
ゾオッ、真咲の背に冷たい物が走る。
舞子なら百叩きの上に、フルチンで木に逆さ吊りでもやりかねない。
「でもどこに行けばいいんだよ。」
膝をつくアイズが、ちらりと鳥を見る。
「きっと事情をご存じのこの方が、力になって下さいますとも。」
「ケッ」
しかし鳥はプイと顔をそらす。
アイズは胸のナイフをシュッと抜いて、キラリと鳥の喉元で光らせた。
「もちろん協力して頂けますね?」
「キョウリョク、スル!スル!」
慌ててバタバタ鳥が羽ばたく。
ニッコリ微笑み、アイズが真咲の手を引いて立ち上がると、真咲はゴシゴシ涙を拭き、力強くうなずいた。



27、

 前を行く鳥はどこをいったい目指しているのか。緑のフワフワした森をひたすら歩いてゆく。
「何か、静かなとこだなー。」
鳥の声ひとつしない世界は、時々木の上から物珍しそうに覗き込む、リスなどの小動物の姿を見なければ、まるで自分たちしかいないような気さえしてくる。
「俺たちの声が、やたら響くよなー。」

「ピピイイーーー!!」

突然鳥が、叫びを上げてバタバタと空高く飛び立ち、姿を消した。
「殿下。」
アイズが立ち止まり、剣に手をかけ辺りにサッと目を走らせる。
「なんだ?」
真咲が慌てて彼と背を合わせ、一緒にキョロキョロびくびく。
辺りはシンと、何も気配がない。
「なあなあ、何もいないじゃ……」

ザアッ!ザザザッ!

いきなり突風が吹いた。
アイズがハッと背中を合わせる。
反射的に真咲が振り向くと突然辺りが暗くなり、一変したその目の前の景色に息を飲んだ。
「いきなり夜?!」
「殿下!私から離れてはなりません!」
シャンッ!
刃を鳴らし、アイズがとうとう刀を抜いた。
真咲がその背にしがみつき、周りをせわしく見回す。
夜かと思われたその闇が、いきなり目の前に集まり、巨大な黒いグリフォンの姿へと変化した。
「ポ、ポチッ!」
「殿下!下がって!」
しがみつく真咲の手を振り払い、アイズが彼の身体を後ろに押す。
真咲が慌てて木の陰に隠れると、アイズが剣を構えて立ち向かった。
しかし、今のアイズにはあまりにもこの剣は重い。
重量ではない。
まるで気を吸い取られるように、ズシンと重く感じるのだ。
前に持ち上げるのも辛く、スラリと下から構える。
キッと黒いグリフォンを見据えながら、ドッと汗が流れた。
重い、こんなに剣を重く感じたことはない。
身体中を流れる血が、冷たくドロドロと滞っているようだ。
このままでは勝てない。
アイズの心が、生き残るすべを探す。
グリフォンから受ける殺気が、彼の全身を覆った。

「グルルルル…………」

うなり声に、ザッと一歩下がる。
グリフォンが、1歩踏み出した。
グイと持ち上げ、重い剣を胸の前に立てる。
目を閉じ、息を吸った。


来るっ!


「グオオオオンッ!!」
「フッ」息を吐いて、アイズが一つ剣を振る。
バッとグリフォンの身体が、剣の軌跡に沿って黒い身体が両断される。
しかし次の瞬間には元に戻り、アイズは数歩退いて、以前対峙した自分の姿を摸した黒いアイズを思い出した。
「首か……」
あの黒いアイズは、首を落としてようやく消えた。
「ギャウッ!」
バッ!獣が跳ねて飛びかかってくる。
アイズは横にいた真咲の腕を掴み、森の木を盾にしながら移動した。
「アイズ!アイズ!」
怖がる真咲は、なすすべもなく懸命に逃げまどう。
震える足を必死で動かし、もつれながらも何とかアイズの動きを追ってゆく。
「グオウッ!」
バキバキッ!獣の鋭い爪が、目前の木をなぎ倒した。
「ひゃああっ!」
「殿下!」
剣で襲いかかる獣の手を切り裂いても、煙のようにすぐに戻る。
巨大な爪が眼前を走り、真咲が後ろに転んだ。
「殿下!」
それを引きずるように起こし、アイズが懸命に走る。
獣と向き合おうにも、真咲が邪魔をして気を集中することが出来ない。
「はあっはあ、はあ、はあ」
やがてアイズの息が上がってきた。
相手も自分の弱点は知っているのだ。
普通の剣であれば、これほどに苦戦はしなかったろう。
思うように剣を振るえない今だからこそ、アイズにはなかなかそれが至難の業だった。
「ピルルルル……」
上空で様子を見ていた鳥が、真咲の頭の上に留まる。
「なんだこいつ、今まで逃げてたくせに!」

「シロイキシハ、ケンツカイ!グリフォンツカイハ、ケモノツカイ!ピルルルル……」


28、

「しっ!」追い払う真咲に、その鳥が叫びながら上空へと舞い上がってゆく。
「獣使いってなんだ?」
「殿下、こちらに!私が引きつけますから、お逃げ下さい!
やあっ!」
アイズが横凪に、グリフォンの肩口を切り裂きじわじわと真咲から離れていく。
「アイズ……!」
真咲は木にもたれながら立ち上がり、キュッと唇をかんだ。
「俺は、俺はちっとも役に立たない。アイズの足手まといで……このままじゃ……」
「あっ!」
突然振り下ろされた獣の爪に、アイズがバッと吹き飛んだ。
木に激しく打ち付けられ、ぐったりとその場に横たわる。
「アイズ!!」
真咲が彼に駆け寄り、抱き起こすと辛そうに顔を上げる。
彼の色を失った顔と口から流れる血を見ると、自分のふがいなさに腹が立ってきた。
アイズも怖いのだ。
でも、それを乗り越えこうして守ってくれる。
それがなぜ、自分にも出来ないのか……
「殿下……なぜ……お逃げに、ならないのです。」
「アイズ……俺は……」

俺は、嫌だ!もう、逃げるのは、嫌なんだ!

グッと拳を握り、立ち上がるとうなりを上げる黒いグリフォンを向く。
「グルルルル…………」
正面に近づいてくる獣の顔に震え上がりながら、真咲がギッと睨み付けた。

これは、ポチだ。
こいつは、ポチに違いない。
いや、きっとそうだ。

気迫を込めて、グリフォンをバッと指さす。

「ポチッ!お座りっ!!」

黒いグリフォンは、しかし言うことを聞く気配もなく、首をかしげ、そしてグッと首を引くといきなり真咲の目前に突き出す。

「グオオオオオンッ!」

咆哮と共に、ブワッと真咲の顔に生暖かい獣の息がかかった。

負けるもんかっ!

「ポチッ!伏せ!言うこと聞け。この……」
震える足でズイッと踏み出す。

「伏せっ!」

バシッと鼻先を、横からはたいた。
ビクンとグリフォンが、不意をつかれた顔を上げて首を引く。
「グウウ……」
「伏せろっ!」
「ウウ…………」
スウッと胸一杯に息を吸う。
ザッとその場に足を踏みしめ、ビュッと手を斜めに切った。

「ふ、せ、ろ!」

腹の底から声を上げる。
その時、グリフォンの目には見据える小さな真咲の姿が、急に大きく見えて思わず頭を下げた。
スッと真咲が手を挙げ、押さえ込むように手のひらを向ける。
グリフォンはそのまま数歩下がり、とうとうペタンと地に伏せた。
「キュウウ…………」
「よし、ポチよ!我が手に戻れ!」
黒いグリフォンがシュウッと小さくなり、ブルブルッと身体を震わせ黒い煙を払い落とし、黄金の輝きを取り戻す。
そしてポンッと跳ねて真咲の手に飛びつき、その姿は真咲の身体と重なった。

「え?」

真咲の身体が金色に光り、それがゆらゆら身体にまとわりつく。
「ポチは?どこだ?」

『うおおおおん…………』

身体を見回す真咲に、身体の中で咆哮が聞こえた。
「何か、変な感じ。やっぱりポチはネックレスがいいな。」
ぽつんとつぶやくと、身体中の輝きが胸元に収束して消えてゆく。
そして胸には、小さい頃から見慣れたネックレスが何事もなかったように戻っていた。

「も……どった?」

ちょっと信じられずマジマジとネックレスを見る。ひっくり返しても、その重みも感触も、真咲のネックレスそのものだ。
「も、戻った?戻った!ウソ!戻ってるよ!アイズ!ほら!」
くるりと振り向き、ようやく木にもたれて座るアイズに見せる。
「殿下、お見事……でした。では、参りましょう。」
微笑むアイズはしかし、抗っても身体中の力を消耗したように動けない。
それでも剣を地につき、渾身の力で立とうとする。
「アイズ、無理すんなよ。」
「しかし……」
舞子がいれば早々に回復も出来るのに、と思えば歯がゆい。
真咲が手を貸し、アイズの身体を座らせ、どうしようも無くさすった。
「どうしよう、舞子がいないと……どうしよう。」
「無様な…………申し訳……ありません。」
バタバタまた鳥が飛んできてアイズの肩に留まる。
「ケンツカイ、ケンニフリマワサレテルナ」
アイズは言われて目を閉じる、フッとうつむき、怠い手で額にかかる髪をかき上げた。
「ああ、そうだ。だから……ファラーナ様に手をお貸しいただきたいのだ。」
「ナルホド。オイ、オマエハ?」
ムカーッと真咲が拳を握る。
どーも自分は、みんなにバカにされやすいキャラのようだ。
「俺様は今ひとつ自分の力出し切ってねえらしいからさ、レミイが修行に行って来いってよ。でも、もういいかなあ。」

「ホホ!あれしきで満足したか?」

いきなり女の声がした。
見回すと、空にネックレスを奪っていった赤い鳥が飛んでいる。
「あーーーっ!こいつ、俺のポチに何しやがった!」
赤い鳥はすいっと降りてくると、アイズの肩にいた金の鳥も飛び立ち2羽が一つになる。
そしてそれは炎に包まれ、ボンッとその火の固まりは人の大きさにまで膨らみ、火のドレスをまとった赤い髪の美しい女性に変わった。
「まさか……あなたがファラーナ様ですか?」
「いかにも、わらわは炎を司るファラーナなり。ふむ…………騎士よ、お前の剣とお前の気は、色が違うな。」
「色が?」
「そうじゃ、似て非なる物。そのままでは剣に気を食われてしまうぞ。
今はその懐にある物が、お前を守る力になっておる。それがなければ、先ほど無理をしたお前じゃ。今頃は息も止まっておろう。」
「これが……?」
懐から取り出す剣のかけらは、レミイの魔法で虹色に輝いている。
ファラーナが差し出す手にそれを掲げると、その手に操られるように剣とかけらが宙を舞う。
「ほほ、すばらしい美しい剣じゃ。
しかしこの剣は、なんと冷たいのであろう。炎より生まれし剣ではないな。」
「はい、私と共に母より生まれました。しかし不幸により、長い時を離れていたのです。」
剣は、炎で熱せられ、打たれて鍛えられる物。
しかし、出生から違うそのアイズの剣は、果たして剣と言えるのだろうか?
鼓動さえ感じて、アイズには生き物のように思える。
「そうか、それで合点がいった。
お前とは本来、共に生きる運命だった物。しかし長きにわたり離れていたことで、多少ズレが出たに違いない。
レミイがわらわに託した意味がわかったぞ。」
「では、力を貸していただけるのですか?」
こくりとファラーナがうなずく。
そして剣を操ると突然それは切っ先を変え、アイズに向いた。
「おばさん!」
驚いて真咲がアイズを庇う。
しかしかまわずビュッと走るその剣は、一気に真咲とアイズの身体を貫いた。



29、

 「殿下!殿下、お気を確かに。」
真咲がぼうっとした頭で、起きあがってキョロキョロ見回す。
そこは、部屋中をリボンとフリルで飾り、やたら女の子っぽい。小さな窓が開いていて、薄暗い外からの風が緩やかにフリルだらけのカーテンを揺らす。
「あり?ここどこ?俺たちどうしたんだっけ?」
「私達は、剣に貫かれたのです。」
「へ?」
うーんと考える。じわじわと思い出してくると、サアッと血が下がってバッとシャツを見た。
「あれ?穴が空いてない。」

「当然じゃ、愚か者。」

気がつくと正面にある木の椅子に、ちょうど小さいレミイほどの赤い髪の女の子が酒を飲みながら座っている。
しかも、レミイとは色違いの白いリボンが沢山ついた真っ赤なワンピースを着ていた。
しかし、顔は眉がなだらかにつり上がって、七色に光る不思議な目をしたあのファラーナの幼い顔だ。
「な、何で、レミイと色違いなわけ?」
「ホホ、この姿の方が、わらわと接しやすかろう?優しいわらわの心遣いじゃ。」
「やさしい、ねえ・・」
いきなり人を剣で刺し貫いて、優しいも無いだろう。
「ンで、アイズの剣はどうなったの?」
真咲はあれからの記憶が全くない。ずっと寝ていたのだろう。
アイズも覚えていないのか、身を乗り出した。
「ああ、あれか。」
ファラーナはずっとガブガブ酒を飲んで、時々服の隙間から火が漏れだしている。
「お前の身体の中にある。」
「ア、アイズの中?!」
「私の?どうなるのですか?」
彼女はぷはーっと一息で酒を飲み干し、ボッと口の端から火を漏らして、ドンッと小さなテーブルにカップを置く。
「うるさいのう。ホホッ!そうじゃ、取り出してやるからそこに横になるがよい。」
面倒くさそうに、床に敷いたカーペットを指さした。
「ここに、横になるのですか?」
真面目に聞いたアイズが立ち上がる。
すると酔っぱらいのファラーナが、意地悪そうにニイッと笑った。
「裸で、じゃぞ。」
「えっ!」
ザザザッとアイズがよろめきながら引いた。


30、

白い顔が青くなり、ダアッと汗が流れる。
「は、裸で、ございますか?」
「ああ、一糸もまとってはならぬ。」

がーーーん!

一瞬めまいがして大きくよろけ、これではいかんと何とか気を取り直してコートの合わせに手をかける。
コートのボタンを2個はずし、3個目に手をかけた所で手が止まった。
女性の前で一糸もつけずなど、そんな、屈辱に耐えられるだろうか?

いや、こんな事でどうする。
剣は騎士の命、それを得る為なのだ。しかし

「あの、あの、脱がないと絶対に駄目なのでしょうか?」
「だーめーじゃー。」
「し……承知、いたしました。」
懇願するようなその姿に、真咲は横で思わずプッと吹き出しそうになる。
これほど取り乱す彼を、初めて見た。
意地悪な彼女の言葉は、本当に必要なのかわかったもんじゃない。
しかしすっかり他人事に眺めていた彼を、ファラーナがちらっと見てニイッと微笑んだ。

ギクッ!

「どうした、お前も脱げ。」
「は?何で俺が。」
「当たり前じゃ、お前はグリフォンマスターであろうが。お前の力無くして取り出せようか。」

「えーーーーーっ!!」

と、言うわけで二人、並んで服に手をかける。
「殿下、申し訳ありません。」
何だかアイズの声が、潤んで聞こえる。しかしファラーナは、後ろでほくそ笑みながら美味そうに酒をクイッとあおっていた。
「なかなか良いのう。苦悩する美しき少年も、良い酒の肴じゃー。」
ファラーナの言葉に、真咲が怪訝な顔でくるりと振り返り、にやりと笑う。

このババア、ハメてやがるな?
見てろよ〜
真咲がズボンのベルトをはずす。

「おい!色ボケババア!」
「なにい」彼女が顔を上げた。

「見ろっ!大砲だあ!」

くるりとファラーナを向き、ガッと一気にパンツとズボンを下ろした。
プルンと真咲のちんちんが揺れる。
すかーっと風が吹いて、意外と気持ちよかった。
「どうだ!見たけりゃ見ろ!向こうの世界で生きてきた俺様なめんなよ!……あれ?」

ガタン!

彼女の手から、コップが落ちた。
硬直したまま目を見開き無言のファラーナに、あれ?と顔を上げる。
「えーと、あのー」
見るとアイズさえも呆然として、何だか、思い切り滑った感じ。
向こうの世界じゃ、笑って『変態!』で終わるのだが。
急に恥ずかしくなり、コソコソズボンを上げる。その時ハッと、ファラーナが意識を取り戻した。

「うふふふふ…………うふふふふふ」

「うおっ?」
不気味な微笑みに、思わず真咲が一歩引く。
「で、で、殿下!」
アイズがハッと気を取り直し、その場にザッと両手をついた。
「申し訳ありませぬ。ファラーナ様、主の無礼をどうかお許し下さいませ!
寛大なお心で、どうか!どうか!」

「うそじゃ。」

「は?」

「ホホホホホ!ウソじゃ、よう見抜いた。ホホホホホ!」
ファラーナが大笑いするのを見て、アイズはがっくりと身体中から力が抜けた。
あんなに悩んだのに、ウソはないだろう。
握り拳を握りしめ、だんだん腹が立ってくる。
しかし彼もそこをグッとこらえ、立ち上がって真咲の横に並んで立った。
「では、剣はどうすれば?」
「ホホ、そう怖い顔をするでない。剣は、すでにお前の手元にあり、お前と共にある。」
ハッと気がつけば、アイズの腰には剣の無い赤い鞘だけが下がっている。
そしてその鞘さえも、今は熱く力を感じた。

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