19、

一番小振りのテントの中、2人の男を前にガッシリとした体つきの30近い男が正面に立ち、顔を上げる。
テーブルには情報収集の者が持ち帰った、詳細に町の様子を描き写した地図。
そこには家々の番号が書き加えられ、赤く印が付けられていた。
それはフェザー達が聞いた、男達が伝えていた不可思議な番号。最も裕福と見られる家を、ポイントをしぼって襲うつもりだ。
もちろんオーナーの家も標的にマークされていた。
「時間は?」
1人に問われ、もう一人が時間を見る。
「1時間後。しかし雨が強くなるようなら早めた方がいいんじゃないか?」
2人が正面の男、首領の顔を見る。
「時間は予定通りだ。天気一つで気持ちが揺らぐなんざ、カスだな。」
言われて男2人の顔が締まった。
若い首領が、まるで恐怖の対象のように手に汗握る。その緊張を見知ってか、首領がかたわらの少年にアゴで合図した。
「まあ、飲め。」
コップを手に、首領が椅子にドスンと座る。
横から15,6の美しい少年が、スラリとした裸体も見えるような薄衣一枚で酒瓶を持ち酌をした。
少年は男達の手のコップにも酒を注ぎ、しずしずと首領のかたわらにひざまずく。
「エネミー、お前もそろそろ準備しろ。その格好で行く気か?」
「はい」
言われて少年は深く頭を下げ、テントの奥でそろりと薄衣を脱ぎ裸になる。
服を手にした瞬間、少年はいきなり手元のナイフを取り、出入り口へと投げた。
「うおっ!」
ナイフは男達の鼻先をかすめ、出口の垂れ幕に刺さる。
しかしそのナイフは刺さった瞬間キンッと小さな音を立ててはじかれ、地面に刺さった。
間髪入れず、垂れ幕の隙間をぬうようにテントに入ってきた人影が地を走る。
「なに?!」
3人の男達が身動きも出来ず凝視していると、少年が銃を取り数発放つ。

パンパンパン!
「主様!」

立ち上がりかけた首領を庇って少年が前に出て銃を振りかざす。しかし人影は風のような早さで少年を殴り倒し、首領の脇腹に拳を突き当てた。
「がっ!」
首領が血を吐きながら大きく後ろによろめき、部下の男2人も銃を抜いて反射的に撃つ。

パンパン!

影は瞬時に弾を避けて身を伏せ、地に手をつき逆立ちの勢いを付けて、蹴りを近くにいた部下の男一人の顔にヒットさせた。
脇の男がかろうじて数歩下がって避け、叫ぶ。
「な、なんだ一体!」
影は白目をむき倒れる男の脇にヒョイと着地して、ゆっくりと顔を上げた。

「ふせて!」
パンパンパンパン!

身を起こし少年が撃つ弾にその鋭く凍えるような青い瞳を走らせ、狭いテントの中を物ともせずコートをひるがえしクルクルと舞う。
動きが速くまったく当たらない。
バッババッ!コートが風を切る音だけが、銃声の間を縫うようにひびく。
「ちいっ!この!」
男が片刃の大刀を抜き、影に向けて一降りする。
狭いテントで逃げ場のない中、影はとっさに身を伏せ男の足を蹴った。
「くっ!」
男が足をさらわれながら、歯を食いしばり刀を影に向けて突く。
影はまるで虫でも払う様にそれを横に払い、倒れた男の腹に一撃を浴びせた。
「げぐっ!」
泡をはき、そのまま悶絶する男を横目に、少年がまた銃を撃つ。
しかし影はヒョイと顔を後ろに引き、鼻先をすぎる弾をよけて飛び上がり間をとる。

「う……」

首領がうめき声を上げぴくりと体を動かす。
ちらと影が目をやり、そして少年に視線を移した。
影……フェザーが心の中で舌打つ。
少年に不意を突かれ、肝心の首領の攻撃に気を削がれ打ちそこねてしまった。
体調が悪いせいだろう、彼らしくない滅多にないミスである。

この少年は侮れない。しかしもう一度首領に一撃入れなければ。

ランプの炎が揺らめき、二人の顔を照らす。
フェザーが少年の顔にはっと息をのみ、ぎゅっと手を握りしめて気を集中する。

この瞳!クローンか……!

「おのれ……」
少年は、覚悟を決めて弾の切れた銃を捨て、更にナイフを抜くと意識を集中した。
再度飛び出して主に向かう人影に向かい、そのナイフで宙を切る。

「はあっ!」
シャッ!

気配を察して瞬間的に身を落としたフェザーのコートが鮮やかに切れ、後方のテントが大きく裂けた。
ランプが落ち、漏れた燃料に火が移る。
身を起こし少年を見ると、その瞳は主を傷つけられた怒りに赤く燃え、華奢な手は再度ナイフを構えていた。

来る!

少年の攻撃の気配を察し、反射的に後転する 。
外へ飛び出したフェザーのいた場所が、テーブルごと地面が裂けた。
「まずい。」
雨の中、小さく漏らしたフェザーが見る先に、テントの中から全裸の少年がゆっくりと現れる。

はあ、はあ、はあ、すう……

乱れた息を整え、フェザーが銃を取る。
敵視するクローンを生け捕るなど、出来るはずもない。
更にナイフを振ってくる少年に、フェザーが銃を撃った。
「はあっ!」
かけ声と共に、少年が大きく手を前に差し出す。
弾をはじいて、衝撃波が後方の木をなぎ倒し、横に避けるフェザーの身体さえも捕らえた。

「ぐっ!」

身体中がハンマーで殴られたような衝撃を受け、後ろに吹き飛ばされながらも片手を付いて一回転し着地する。
痛みを飲み込み、切れた唇をぺろりとなめた。
雨に濡れ、水を吸ったコートが重い。冷たい泥がジーンズを濡らし、滑る足下に身体が揺らぐ。

シャッ!

ナイフを振りかざす少年から放たれた鋭い衝撃波が、雨を切って向かってくる。
とっさにふせたフェザーのコートの、脱げたフードが背中でバサリと切れて落ちた。
あらわになった顔を上げ、少年を睨め付ける。
クローンがいることは、最悪の想定だった。
これだけの大きな盗賊団だ。考えが甘かったのだろうか。
彼が今持つ銃は、クローン相手ではおもちゃのような物だ。
当たっても一発では動きを止めることはできない。

それでもやるしかない!

サアアア…………

雨が勢いを増し、髪が濡れてポタポタと滴が落ちる。
コートのエリから雨が中まで侵入し、身体中を雨に濡らして行く。
このままでは、冷えて身体の動きが鈍る。
フェザーが覚悟を決めて飛び出した。

20、

タタタン!タタタタッ!!

その時、突然少年の背後から自動小銃がフェザーに向けて発射された。
「くっ!」
瞬時に飛び退き、銃を撃つ。
しかし弾の動きが見えるように、スッと少年が手を挙げ、弾は難なくはじかれてしまった。
やがて火が燃え移ったテントの中から、自動小銃を持った首領が、火を避けよろめきながら現れた。
「イテテ……なんて奴だ、誰も出てきやしねえ。ってことは、他の奴ら全部倒しやがったのか?こいつが。」
「はい、主様申し訳ありません。エネミーは気が付きませんでした。」
「ふふっ、見たかよエネミー。あの狭いテントの中での動き。まるでカミソリが風に舞ってるみたいだったじゃネエか。」
「主様……攻撃を防ぎきれず申し訳ありません。」
「まあいいさ、こんな手練れがあの村にいるとはな。運が悪いぜ。」
フードもなく、燃えるテントの炎に照らされたフェザーの姿に、感嘆の溜息を上げ首領がアゴをさすった。
「へえ、ずいぶん美人じゃねえか。いや、こいつ男か?ははっ、神様って奴もずいぶん気まぐれだな、人間にもこんな綺麗な男を作りやがった。クローンじゃねえよな、エネミーよ。」
「いえ……この方は……」

私と同じ型式のクローンだろうか。
あの突きは、確かに気を乗せて一撃必殺をねらっていた様に思える。
でも、この人の瞳は美しい、澄んだ水の様なブルーだ。

エネミーが、探るように鋭い目でじっと見る。
2人のなめるような視線を浴びながら、フェザーは一つ息を吐いた。
顔を上げると、冷たい雨が顔にピシピシ当たる。目的を思い出したように、その言葉をようやく口にした。

「説得に、来た。」

今更もの凄く遅すぎる言葉だが、挨拶程度にフェザーが声を放つ。
呆気にとられた首領が、プッと吹き出し大笑いした。
「なんだって?ここまでやって説得だ?
エネミーよ、コイツは面白い奴だな。全部倒してサシで説得だとよ。こんな警戒心の強い奴なんて見た事ねえ。しかもお前、一発食らったあとだぜ?説得じゃなくて、脅しじゃネエか。ククックックック」
「主様」
「貴様、あの町の用心棒か?」
問われてもフェザーは答えない。
首領はヒョイと肩を上げ、銃を肩にへえと眉をひそめた。
「説得というのは武器を介さない言葉の戦いだ、お前さんのはただの奇襲。
奇襲で言えば成功だ。だが……
あんた、軍ってことはなさそうだな。説得と言うには頭が悪すぎる。
だが戦闘能力からすると、マフィアの殺し屋あたりかな。」
「……俺は、頭が悪いから、こういう方法しか知らない。」
ひゅっと、いきなりフェザーが腰からナイフを取り、首領へ向けて投げた。
エネミーが瞬時に手を伸ばして首領の眼前でそのナイフを受け、フェザーに投げ返す。
フェザーは鼻先で刃を指2本ではさみ受け取ると、一息吐いてホルターにもどした。
「なるほど、実力行使派と言うわけかよ。
頭の悪い奴、ククッ……気に入った。
エネミーよ。お前、このやたら綺麗で化け物みたいな奴を生け捕ることが出来るか?」
少年は、即答できず答えに窮している。
この男、タダの人間ではない。自分たちと同じ匂いがする。しかも場慣れして強い。
生け捕るどころか、倒せるかさえ自信がないのだ。しかし……
一陣の風が吹き、雨に濡れて重いコートにフェザーが一つ足を取られた。

なんだ?限界が来ているのか?

よろめいたフェザーにエネミーが勝機を感じ、かすかにうなずいた。
「主様のご命令のままに。」
ナイフをその場に落とし、少年が手を開いてフェザーに向ける。

来る……

フェザーがクローンの少年を見据えた。

今の自分には余裕がない。
殺すか、手負いで済ませられるか。

しかしここでクローンを倒すと、自分の居場所は軍に知られてしまうだろう。
普通の人間に、クローンは倒せない。
心の迷いに、負けるかもしれないと嫌な予感がかすめた。
寒い。
震え始めた身体を押さえ、懐を狙って接近戦を覚悟する。

殺すか殺されるか。
俺は今、死ぬわけにはいかない。
生きると決めたんだ、そこに何もなくても。

フェザーは銃をホルターにしまうと、腰からナイフを抜いた。
燃える炎に、刃が鋭く光る。
逆手に構え、グッと重心を前に移動した時……

「ギャオッ!」

突然現れたティーダーがテントの影から飛びかかり、少年の腕に噛み付いた。
「きゃっ!」
そのまま後ろに押し倒され、牙と共に鋭い爪が肌に食い込む。
裸の少年には守る物が何もなかった。
「ひっ!きゃっ、ぎゃあああ!!」
「エネミー!」
痛みに顔を歪め悲鳴を上げるエネミーに、首領が小銃をティーダーに向ける。

ザザッ!「えいっ!」ドガッ!

その背後から、飛び出したベリーが思い切り脇腹に拳を入れた。

「ぐがっ!」

首領が血を吐き、たまらず倒れる。
「く、くそ!またアバラか!ぐ……くっ!」
「主様!」
とどめの突きを入れようとするベリーに、横から突然衝撃がかすめた。
「まさか、クローン?!」
飛び退くベリーの前で、血だらけのエネミーが自分には構わず主を守ろうとする。
その姿に胸がつまり、ベリーに隙が出来た。
「く、くそっ!」
首領が血を吐きながらも立ち上がり、ティーダを蹴り除けてエネミーを抱き上げる。
「主様!」
近くの馬に飛び乗り、2人はその場を逃げ出した。

21、

暗闇の森の中、村と反対の方向へと馬を走らせる。
闇に道を見失いそうになりながら、ひとしきり馬を飛ばした。
血だらけのエネミーが、血を吐く首領の顔を見上げその血を指で拭き取る。
「主様、主様!」
「しゃべるな!舌をかむ。お前を失うわけにはいかんのだ、今は逃げる!
クソ、同じ所をやられた。肋骨半分いっちまったかな。」
「内蔵にキズが?!」
「いや、痛みは相当あるがな。なに、またゼロから始めるだけだ。気にするな。」
「ああ……申し訳ありません……」
涙を浮かべるエネミーが、主の身体に抱きつく。
「ケガは?」
「主様に比べれば、このくらいはかすり傷です。」
「身体が冷える。俺のコートに入れ。」
「はい。」
雨に濡れる裸体を首領のコートの中に入れ、2人は暗闇の森へと消えていった。


「フェザー!」
ベリーが、立ちつくすフェザーの元へ駆け寄ってゆく。彼はびしょぬれの髪を顔に張り付かせ、歯を鳴らして小さく震えていた。
「大丈夫?寒いの?」
「どうしてここに……1人でいいって……」
「バカッ!」
ペチン!フェザーの頬を叩き、キスをしてベリーが彼の身体を抱きしめた。
「疲れてるくせに!1人では無理だって、わかってたくせに!僕、わかってるんだからね!」
「…………うん。だから……ベリーを守れないって思ったんだ。」
暗闇の空を見上げ、雨に打たれてゆらりとかしぐ。
「フェザー!」
グッとベリーの腕が力強く、身体を支えてくれた。

ああ……1人じゃないんだ

なぜか、クスリと笑みが浮かんだ。
「もう、信じられない!僕がフェザーを守るのがホントなのに!どっちがオマケかわかってないよ、フェザーは!
もう!泥だらけだよ!何?この汚いコート。ボロボロじゃない?盗賊の物なんて脱いで、ほら。やだ、男くさーい!なんて臭いのコートだよ、もう!」
雨の中、ベリーがワイワイ叫びながらさっさと世話を焼き始める。
フェザーはやっと立っているような状態で、グラグラしながらなぜか猛烈な睡魔に襲われていた。
「なんて忌々しい雨!身体が冷えちゃう。」
腹を立てて空をにらむと、おびえたように雨の勢いが止んだ。
「あれ?このままやめばいいけど。
なんて事だろ冷え切っちゃって、身体をこわしたらどうするの?
ほら、これを着て。」
ベリーが自分の上着をめくり上げて、腰からショールを取り出す。そのショールで濡れた彼の身体を包み、背中に背負った。
「自分で歩くのに……」
力無い声は、ひどく眠いように聞こえる。彼の身体の震えに、来て良かったとホッと安堵した。
「いいの、歩ける人が歩けばいいんだよ。とにかく早くここを離れないとね。村からポリスが来るから、見られたら大変。
足場が悪いから、滑って転んでも怒らないでよ。」
「フッフッフッ……」
息づかいに横を見ると、ティーダーがフェザーの匂いをかいですり寄ってくる。
「じゃあ、帰ろうか。……えーと、お前にも名前をあげないとね。んー……」
「キュウ……」
血の付いた口元をベロリとなめて、小さく首をかしげる。
「そうだ、ガブッとかんだからガブリエルにしよっか。大天使ガブリエル!」
「キャウウ、クー」
気に入ったのか、ノドをゴロゴロ鳴らす。
このティーダーは、まるで人の言葉が理解できるのかとベリーは笑った。
「さあ行こうか、ガブちゃん。」
歩き始めた彼のコートのすそを、なぜかガブッと噛み付いた。
「な、何?まったくこの子は!急ぐんだよ僕らは!行くよ、ガブリエル!」
「ウウ」
返事を返し、口を開いてコートを離し先を行く。どうやら「ガブちゃん」は気に入らないらしい。ベリーが呆れて、歩きながらフェザーをよいしょと背負いなおした。
「まったくさ、ゆっくり休むのもいいなと思ってオーナーの気持ちも受けたのに、これじゃあ旅を続けた方がどんなにマシだったろう。」
「……俺、疲れてたんだ……な……」
「ま、自分で気がつかなかったの?まあ、僕も気がついたのはこの町に来てからだけど。
大体いつだってピリピリしてうたた寝なんて日頃しない人が、ベッドに横になったとたん寝るなんてあり得ないじゃない。
もっと自分の身体にも気を配ってくれないとさ…………あれ?」
耳元で、スウスウとフェザーの寝息が聞こえる。
「まったく、意地っ張りなんだから。フフッ」
ベリーは道を外れて森の中を歩きながら、まるで清々しい陽光を浴びているように美しく微笑んだ。
「僕はね、レディ。バランの気持ちも嬉しいんだけど、今はあなたが一番なんだよ。
本当に、あなたの笑顔が大好きで、それが見たくて……それを見るのが一番幸せなんだ。」
聞こえていないだろう彼はどんな夢を見ているのか、小さくつぶやく声は寝言だろう。
やがて道を外れて森を歩く彼の横を、沢山の人々がランプと銃を手に盗賊達の元へとすれ違って行く。
その先頭をバランとデュークが行くのを、ベリーは木陰に隠れながら見て目を閉じた。
「ありがとう、バラン。ありがとう、こんな僕を好きになってくれて。」
雨なのか、それとも涙なのかひとしずく頬を伝う。
好きだと、告白されたのは初めてだ。保護されるまで、人間にはいつだって搾取されるばかりで傷ついてきた。
人に愛されるなんて、こんなに嬉しいことはない。バランは気のいい男だ。しかし、自分はクローンなのだ。
きっと人間じゃないと知ったら、彼の態度は大きく変わる。

僕は、そんな彼を見たくない…………

ああ……神様、どうか僕に力を。

ガブリエルが、コートのすそをかんでクイッと引いた。
「うん、行こうか。」
顔を上げ、また町へ向けて歩き出す。
闇に飲み込まれそうな、シンとした木立の中を越えてやがて森を出ると、人目をさけてホテルの裏手へそっとしのんでいった。



町の人々がポリスと共に、キャンプに灯るあかりを捜して闇の中の森を進む。
雨の中、足下が悪く何度も滑りながら、銃を手に警戒して辺りを捜した。
「あったぞ!こっちだ!」
「警戒しろ!相手は盗賊だぞ!」
じりじりと、ポリスを先頭にキャンプへ近づいて行く。
しかし、そこへたどり着いた人々はその様子に息を飲んだ。
テントの一つは切り裂かれて倒壊し、辺りは争ったあとか地面が激しく荒れている。
裂けたコートが一枚脱ぎ捨てられ、大きな木が何か激しい力を受けてなぎ倒されていた。
テントの入り口には数人が倒れ、そっと中をうかがうとバタバタと数人が倒れている。
「こっち、中で倒れてるぞ!」
「こっちもだ!」
皆、特にケガは見受けられない。
ただ気を失っていただけなのか、武器を取り上げ縛り上げると次第に気がついていった。
バランとデュークは、ひっそりとフェザー達の姿を捜す。
しかしどこにも2人の姿は見えない。
「どうだ?」
「いない。まさかこれ、彼らの?」
「まさか、これだけの人間を……男はみんなゴツイ奴らばかりだし、武装してるんだぜ。」
小降りになった雨に濡れながら、ふとランプに照らされた地面に目が行く。
デュークが泥の中に一本の紐を見つけ、水たまりで洗ってランプの下でバランと顔を見合わせる。
「なんだよ。」
「この青い紐……フェザーの……」
「まさか……ほんとに?」
それは夕食の時見たフェザーの、編んだ髪を留めていた青い紐。
デュークは確かに覚えていたのだ。
「何だ?2人共なんか気になるモンでも見つけたのか?」
いきなりポリスの知り合いにポンと肩を叩かれ、デュークが何気なく紐をポケットにしまった。
「い、いや、不思議だなあって喋ってたのさ。」
「まったくだよ、仲間割れか何かだろうかね。あっ!おーい、どこに連行するんだ?!」
ポリスが背中を見せ走って行く。
バラン達はうなずき合い、紐をポケットにしまうと無言で仲間達を手伝いに駆け寄っていった。

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